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巷説百物語 京極夏彦著

文体が古文調なので初めは読みづらいが、テンポがいいので慣れてくるととんとん進む。妖怪よりも恐ろしい人間の業をえぐり出す。内容が内容だけに読後感がさわやかとはいかないが、ここまで突き詰めると、逆に美しいと感じた。とくに最後の物語。愛する女の死体の傍らに添い続ける男の話。死骸が醜く変貌していっても男は側を離れない。かなり凄みのある話だが、何故か凄惨な美しさが漂っている。

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ぐうたら人間学 遠藤周作著

狸理庵シリーズ ユーモアの溢れる語り口で、電車の中で吹き出しそうになってしまった。それでも人生の悲哀をさりげなく出せてしまうところが、さすがだ。著者が昔、恩師に言われたという言葉。「美しくもなく、役にもたたなくなってしまってからどう生きるか今から考えておく」こと。それはだれもが課せられた宿題かもしれない。

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いままで受けた翻訳講座の比較 (通信教育版***注)独断と偏見ですが)

翻訳学習者の皆様に少しでもお役に立てばと思い、受講した通信教育講座の所感を書いてみようと思います。
今は、文芸翻訳一本に絞っていますが、改めて振り返ると、ほんとに彷徨ってましたね。一貫性がないというか。

フェローアカデミー 

 ・ステップ24 12ヶ月

 やさしめの内容なので、上級者には物足りないかも。翻訳入門にいい感じ。提出期限もゆったりです。
丁寧に添削してもらえますが、評価も結構甘かった・・・。
ここで、調子に乗ってしまった私はすっかり、その気になってしまったというわけです。
今思うとなんと大甘だったことか。
 
 ・実務翻訳 ベータ 6ヶ月
 
実務向けの切れのいい表現が体系的に学べます。簡単な日英翻訳もやれるようになっているのでお徳かも。
翻訳の捉え方が面白かったです。

DHC

 ・英日翻訳講座 英日コンピュータコース 6ヶ月

テキストが充実していました。コンピュータの基本が分かるように図もふんだんに使われています。
コンピュータ用語辞典もついてきます。課題も比較的難しく、量も多かったように思います。

ジャックス
 ・英日契約書翻訳講座

一回一回課題を購入するようになっています。どこからでも始められます。
費用対効果のよい講座だと思います。添削もとても丁寧。
Aを何度かとると上のコースに行くことが出来るようになっていて、頂点にいけばジャックスの翻訳者になれる仕組みになっています。

バベル 

・日英契約書翻訳講座

唯一終わらせることが出来なかった通信教育講座でした。費用も高かったのに、もったいない。
テキストを見ながら課題をやっていくのですが、模範解答を見ながら自分の解答を作成するという、珍しい方式で、これが、どうも合いませんでした。目の前に答えがあると、何故かやる気がおきなくって。
講座を申し込んだら、いきなり勧誘の電話が来て驚きました。
バベルの大学院に行かないかっていう電話でした。思いっきりセールスマンといった感じのしゃべりで、  かなり警戒心を抱いてしまいました。
    

    

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走るジイサン 池永 陽著

すばる新人賞受賞作品
気楽な隠居生活を送っていた作次は、息子の嫁に恋心を抱いたころから、自分の頭の上に猿が乗っかっているのに気付くようになる。
ユーモラスな語り口で、人生のおかしさと悲しさを同時に描き出している。
等身大の人物像に親近感を感じずにはいられない。私たち誰もが持っている優しさや、弱さや、ずるさを、この作品の登場人物たちももっている。
いい人、悪い人というように、安易に白黒分けて片づけてしまわず、難しい灰色を出すことに成功していると思う。
知らぬ間に、頭の上にさるが乗っていたという異常な設定だが、描き出す人物や、出来事はリアル。読んだ後にあれこれ考えてしまった。感動した!とはいえる性質の本ではないが、こういうのも名作なんだと思う。

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動機 横山秀夫著

この作者といえば、長編小説「半落ち」が有名だが、短編も名手。文章がかなり上手い。
無駄な文がなく、贅肉のない鍛え上げられた体を思わせる。
犯人が女子高生を殺してしまうシーンなど、短く畳みかけるような文体が息詰まるような緊迫感を生みだし、読むものを圧倒する。

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しゃばけ 畠中 恵著

日本のファンタジー。薬問屋の、体が弱い若旦那と、若旦那を守る妖怪たちのお話。視点が若旦那になったり、妖怪になったりと、あちこちへ動くので慣れるまでは違和感があったが、アイディアはとてもよく、雰囲気作りも上手い。作者は漫画家の出だとか。考えてみれば日本にもファンタジーが育つ土壌があるのだなーと思った。妖怪は小人や妖精みたいなものだし。楽しめた。

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理由 宮部みゆき著

高級マンションの一室で家族と見られる人々が殺害された。しかし、殺されていたのは、その部屋の住民ではなく、本当の家族でもなかった。謎めいた事件をとりまく人々を描く事で、住宅問題、希薄な人間関係、親子問題など、様々な現代の社会問題を浮き彫りにしていく。登場人物に思わず話し掛けたくなるほど、厚みのある人物像。読み応えありました。

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慟哭 貫井徳郎 著

驚きの結末。電車の中で、あんぐり口を開けてしまった。「そして誰もいなくなった」以上の驚きかも。緻密に計算された構成に目を見張る思いがする。文章も達者。娘をなくして宗教にのめりこんでいく親の心理が鬼気迫る筆致で描かれている。あまり書くとネタバレになってしまうので、もう書きません。もう一度読んで細部を確認したくなる。

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30歳になる前って何故……

30歳になる前、何故か妙に焦っていました。ドラマや、小説に登場する30過ぎた女性は、みな私よりも大人びていて、カッコよくて。ああならなければならないような、変なプレッシャーがあった気がします。
何がやりたくて、何がやれるのか、いろいろ彷徨いました。
翻訳の勉強もそんな焦りから始めたものの一つだったかもしれません。
けれど、何故かこれだけは続いています。通信教育を始めたころから数えると、はや5年。今は通学の教室に通っています。飽きるどころか、どんどんはまっていっている自分が怖い・・・。結局、文章を書いたり、本を読んだりするのが一番性にあっているからでしょうね。

このブログを開設したのは、はやくかえるになってぴょんぴょん春の大地を跳ね回りたい、という願いをかなえるべく、自分を叱咤激励するため、それから、読んだ本の内容を忘れないように、自分の中で整理したかったからです。人にお勧め本を紹介したいと思ったとき、「あれよかったよ、ほんとに」位しか言えず、何度も情けない思いをしたもので。
ブログ初体験ですが、ちょこちょこ更新していければな、と思っています。つまらないところですが、ゆっくりしていってくださいませ。

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うつくしい子ども

平凡な高校生だった主人公の人生が、弟が殺人を犯したことで一夜にして変ってしまう。周囲の悪意に惑わされる事無く、殺人にいたった弟の心の動きを捉えようと、果敢に問題に立ち向かっていく少年。そんな中でも、少年に協力を惜しまない真の友人たち。題材が限りなく暗いのに、一筋の希望を感じさせてくれる作品。
少年が、マスコミのカメラに囲まれ、フラッシュをたかれるシーンがあるのだが、その情景を「白い闇」と表現していた作者は、言葉の感覚が鋭い人だと思った。さすが、コピーライター出身。

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重力ピエロ  伊坂幸太郎 著

「このミス2004」国内第3位に輝いた作品。
母がレイプされて出来た子が弟、春だった。世間の冷たい目にも負けず、春を兄と分け隔てなく育てる父と母。
自分とはまるで違うが、純粋で強く、魅力溢れる春を大事に思う兄、泉水。
落書き消しの仕事を始めた春は、ある日、放火現場の側に描かれた落書きが、連続放火事件の手がかりになっていることに気づく。癌を患う父も巻き込み、三人は放火犯を見つけるためにそれぞれ行動を開始する。
意外な犯人。遺伝子と戦う親子の悲しい結末。
この作者ならではの軽妙な台詞回しはそのままに、重いテーマが気負いなく描かれている。
読後感は爽快とは言いがたかった。いつまでも心に引っかかる感じ。哀しいような、苦しいような、それでいて、少しさわやかなような。これは名作であるがゆえだろう。

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