リセット 北村薫著
時間と人間をテーマにした3部作の1作。芦屋のお嬢様学校にかよう真澄は、一緒にカルタ遊びをした、友人のいとこ修一に淡い恋心を抱くようになった。時代は、戦争の影が日々色濃くなっていく1940年代、飛行艇の製作工場で再会した二人は互いに思いを募らせていく。しかし、ある日工場は集中砲火にあい、二人の恋は修一の死によって無惨な終わりを告げたかに見えた。生き残った真澄は独身を貫き、子供向けのほんの出版社で働きはじめた。本の需要を探るため、小学生相手に本を貸しはじめた真澄は、そこで出会った6年生の村上君の中に、修一の姿を認めるようになる。
いつもながら男性の作者がこれほどリアルな少女像を描くことができるのが不思議でならない。はじめ、作者はてっきり女性だと思っていた。
3部作の中では、時間が流れずに同じところをぐるぐる回り続ける世界に閉じ込められた女性を描く「ターン」が一番面白かったが、作品のテーマ自体はこちらのほうが壮大かもしれない。ただ、残り三分の一あたりから一気に話が展開するが、それまではテンポがとてもゆっくりしており少々だれてしまうのが残念。輪廻思想的なものも入ってくるため、共感しづらい人もいるかも。
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