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ねむりねずみ 近藤史恵著

 人気歌舞伎役者小川半四郎の婚約者が、舞台の最中、謎の死を遂げた。深々と胸に包丁を突き立て、ふくら雀に笹雪の着物を赤々と染めた姿は、まるで舞台の一場面のように美しかったという。大部屋の女形小菊は友人の探偵今泉に手を貸し、事件解明へと乗り出していく。
 一方、小菊の視点で展開していくストーリーとは別に、若手女形、中村銀弥の妻一子を視点としたストーリーが進行していく。 銀弥の凄まじいばかりの才能に惹かれて一緒になった一子。しかし、夫の情熱と才能はすべて舞台の上に注がれていた。舞台の上でのみ生き、あとは眠っているような夫に対し、一子はしだいに心寒いものを感じるようになり、別の男性へと心惹かれていく。そんなとき、銀弥の身に異変が生じる。頭からことばが抜け落ちていく……。失語症。役者生命をもおびやかす異変に、一子の心は大きく揺れる。
 小菊と、一子の二つのストーリーが一点で交わる時、意外な真相が明らかに……。

 銀弥の舞台にかける壮絶な執念。単純には割り切れない一子の女心。大部屋俳優小菊の舞台への切ない思い。 梨園をめぐる人々の思いが鮮やかに描かれて、ストーリー全体が一幅の艶やかな絵のようだ。
充実した時間を約束してくれる作品。 あえて難をあげるとすれば、魅力的なワトソン、小菊にたいして、探偵役今泉が薄いこと、くらいだろうか。

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