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半落ち 横山秀夫著

妻を自らの手にかけた警察官、梶警部が自首をしてきたことで、警察、検察、裁判所、そして世間は大きく揺れていた。
動機は明白だった。50前の若さでアルツハイマーを発症した梶の妻は、ついに、白血病で亡くした息子の命日さえも忘れてしまうまでになっていたのだ。梶警部は、取調べで、「母親でいられるうちに死なせて欲しい」と妻に懇願され手をかけたこと告白するが、殺害後自首までの2日間の行動については口をつぐんでいた。
空白の2日間。捜査官、検察官、新聞記者、弁護士らがそれぞれの立場からこの2日間の解明に乗り出していくが……。
 人を殺したとは思えない、美しく澄んだ梶の瞳。その瞳に魅入られたかのように、梶警部をめぐる人間たちは、自らの内面をも振り返るようになる。
梶警部を描くと同時に、梶をめぐる6人の男たちをも、えぐる様に克明に描き出している。
 寺尾聰主演の映画「半落ち」の原作。殺人物とは思えない美しい内容。梶警部があまりにいい人なのに、ちょっと違和感を覚えてしまった。いろいろ読んで擦れてきてしまったのかなあ…。
でも、周りの人間を掻き立て、変えていくほどの存在なのだから、このくらいに描く必要はあるんでしょうね。

 美しいといえば、この作者の文章。日本の伝統芸能、能や、茶の湯を思わせるような静謐な美しさが漂う。見事なまでに無駄の無い文章は、翻訳を学ぶ上でもぜひ模範としたい。この作品があまりにも有名ではあるが、文の美しさという点では短編のほうが際立つ感がある。

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» 横山秀夫の「半落ち」文庫化。  [本屋のバイト、書籍を探訪す。]
良く売れた小説はたいてい文庫化される。たいてい数年はかかるのだが、熱心に待っている人もいるとみえて、買っていく人も中々多い。値段も安くて手頃だから、私のような貧乏学生には有り難い話である。文庫化を機に愛読者が増えていく事もありそうだ。 さて、今回紹介す....... [続きを読む]

受信: 2005年11月 1日 (火) 01時56分

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