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「物語のおやつ」 WAVE出版

「たのしい本を見つけたのでご紹介します。著者は翻訳家であり作家でもある松本侑子さん。
「赤毛のアン」のイチゴ水、「小さなスプーンおばさん」のコケモモジャムつきのパンケーキ、「ぐりとぐら」のカステラなど、昔読んだ物語の中でやたらとおいしそうだったおやつたちが写真とレシピ付きで並んでいます。おやつが登場してくる物語の背景についても書かれていて、懐かしさに食文化に造詣が深い著者が、世界中を旅して実際にそのおやつを食べた体験もつづられていて、読み物としてもとても面白い本です。眺めているだけでも顔がにやけてしまう……。

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前々回学んだこと

遅くなりましたが前々回の授業の反省です。

1 原文と語順を変える時は要注意

翻訳の勉強をしていると、訳す時に、頭から訳せとはよく言われることですが、おさまりが悪かったりすると、英文和訳式に後ろから訳すこともよくあります。しかし、原文と語順が変わる時は注意が必要です。その語順であるのはそれなりの意味がある場合があるからです。後ろの文章が次の文章とリンクしているような場合に、後ろの文章を前に持ってきて訳してしまうと、つながりがきれてしまい、読みづらい文章になってしまうので要注意です。

2 原文を理解しているか?想像してみたか?

 前回も書きましたが、単に直訳しても自分でわかっていない時には、訳も説得力がありません。というか、意味が分からない訳になっていたりします。今回は中国からアメリカに密入国する中国人の描写だったのですが、その流れを具体的に想像することを怠ったため、矛盾が生じているのに気がつきませんでした。具体的に想像してみることが重要。

3 主語を統一する。
 原文の主語が一文ごとに代わっているような場合、受け身にするなど工夫して主語を統一する。文の流れを良くして、読み手に違和感を感じさせない工夫をしましょう。

4 字面どおり機械的に訳さず、その文が文章全体の中でどういう意味をもっているのか考える。
 
 その文章が主人公の性格や置かれた状況を表すエピソードの一つであれば、それをふまえた訳文をつけることが肝心です。

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世界の果ての庭―ショート・ストーリーズ 西崎憲 著

第14回日本ファンタジーノベル大賞受賞作。不思議な作品。
 イギリスの庭をこよなく愛する作家のリコと日本文学を研究するアメリカ人スマイスは互いに惹かれあい、スマイスの祖父が残した謎の手紙をともに解読しようとする。それと別に、まったく時代も背景も違う物語が同時にいくつも進行していく。
 夫と娘を捨て駆け落ちをし、数年後にひょっこり戻ってきた母は、少しづつ若くなる病気にかかっていた。日に日に若くなり中学生の娘よりも若返っていく母。ようやく三人の生活を取り戻した娘は、若返っていく母に不安を覚える。
 そして、江戸時代の辻斬りの話。辻斬りを繰り返していた男は以前からたびたび奇妙な言葉を口にしていた。
 第二次世界大戦の日本人脱走兵の話。命からがら脱走した日本兵は逃亡の途中意識を失い、気が付いたときには駅にいた。上に上っても下へ降りていっても永遠に駅だけが続く空間。トンネルを通って日に何本か列車が来るが、その列車に乗るとは出来ない。トンネルを抜けて逃げ出そうにも、トンネルの中には人間をはじき出す寒さと、恐怖が渦巻いていた。そこには様々な国や時代から来た者たちが住んでいた。列車が置いていく食料や日用品で暮らしていく日々。男は何とかして国に残してきた婚約者の下に戻ることを心に誓うが・・・。

 互いに交差することの無い4つの物語。まるで違うようだが、悪い夢のような、どこか、人を不安にさせるような奇妙な美しさが、どの物語の底辺にも流れている。ダリやキリコの絵を見ているような感じがした。

 作者はかなり、博識な方のようだ。庭についての考察は一読に値する。また、江戸時代の話も含め、まるで違う物語を綺麗に書き分ける筆力。只者でない匂いがする。

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やっとハリーポッター5(不死鳥の騎士団)が読み終わりました

 長かった・・・。いま振り返ると4月ごろから持ち歩いてたんですね。この分厚い本を。途中、別の本に浮気をし、そちらを先に読んだりしていたので、だいぶ時間がかかってしまいました。UK版で、一ページのワード数が多いのに、それでも766ページもあるなんて。
 しかし、だんだん内容が暗くなっていきますねー。3巻くらいまでは読み終わると爽快感があったのに。今回はどんよりと暗い気分。4巻の終りで初めて人(味方)が死んだ時はびっくりしましたが、今回はさらに重要人物が死んでしまいました。だんだん、児童文学から離れていくような……。とにかく、今回はひたすらハリーや、ハリーの仲間たち受難の日々(ダンブルドア先生やハグリッドも大変な目に。)なので、読んでいてストレスが溜まってしまいました。ハリーも始終ピリピリし通しで、周りの人たちに当たりまくるし。
 ハリーポッターはどの巻もその傾向があるのですが、前半は学園ドラマ的な内容でゆっくりと進行し、後半で一気に激しく展開します。今回は展開しはじめるまでがとにかく長く(残り5分の1くらいからようやく展開)、こんなに引っ張る必要があるのかなーとついつい思ってしまいました。今までに無いほど激しい展開の仕方ではあったのですが(アクション満載でした。やっぱり展開している部分の方が読むスピードもあがりますね。)個人的には3巻の「アズカバンの囚人」辺りが一番勢いがあって、バランスもよく、面白かったです。

 英語的には、児童書といってもそれほどやさしくはありませんが(5巻くらいになると大人の本とあまり変わりません)、初めて読む洋書としてはお勧めです。私も、まともに最後まで読み通せた洋書はハリーポッターが初めてでした(ノンネイティブ向けにやさしく直した本をのぞけば)。巻をおうごとに主人公が大人になっていくため、少しずつ英語のレベルも上がり、ちょっとずつレベルアップするのにはもってこいです。また、シリーズ物だと出てくる単語も決まってくるので、読み進めるにつれて単語を覚え、だんだんと読みやすくなっていきます。
 
 なんだかんだと批判めいたことも書きましたが、やっぱりこのシリーズには思い入れがあります。初めて洋書を読む楽しさを教えてもらいました。英語の文を読んで、絵として場面が見えたのはこの本がはじめてで、それはかなり新鮮な体験でしたから。次の巻はまだハードカバーしか出ていないので、ペーパーバックが出たら読もうかな。全巻読み終わってしまうのも寂しいので、ゆっくり読もうと思います。
 

 

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お道具箱 スープメーカー

翻訳は体が資本!という事で、翻訳とは直接関係ありませんが、最近野菜スープに凝っています。
変わった家電があるとつい手を出したくなってしまう私は、スープメーカーなるものを試したいという欲求に勝つことが出来きませんでした。
野菜をざくざく切って入れると、裏ごししなくても30分でなめらかなスープが出来るというすぐれ物です。メーカーはゼンケン。おかゆや、食感を残した食べるスープも作る事が出来ます。
スープ専用の保温容器に詰めて毎日職場に持参しています。トマトベースにしたり、カレー粉を入れたり、生クリームを入れたりと、いろいろアレンジしているので、毎日でも飽きません。
おいしくてカロリーも低いので、安心して沢山食べられますしね。
余りものの野菜(ブロッコリーの芯とかキャベツの切れ端とか)をどんどん処分できるのも魅力。

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前回はお当番でした

いつも、課題箇所しかせいぜい数ページ先くらいまでしか読んでいかない怠慢な私ですが、今回は、短編ということもあり、最後まで読んでから訳してみました。やっぱり読んでおいた方がいいですね。
おかげで、だいぶ誤訳を避けることが出来ました。読み終わってから訳しなおした箇所が数箇所。危なかったー。それでもまだ、主語を取り違えるという恥ずかしい間違いをおかしてしまいましたが。
 お当番はいつも2人でやるのですが、これがまた心強くもあり、辛いところでもあります。どうしても二つの訳文を比較しながらの進行になりますから。一緒にお当番をした方はいつも緻密な調べ物をされる方で、先生が重要視されるポイントもしっかり掴んでおられるので、案の定、自分の未熟さに恥じ入ることとなりました。こちらはそもそも、ポイント自体どこかもわかっていなかったりするので。「いやあ、そんなこと考えてもいませんでした……」なんていう場面も幾度か。

それにしても、やはりお当番ともなると、いつも以上に中身が濃く感じられます。先生にご注意を頂いた各所には大事なエッセンスがたっぷりとつまっていました。

1 キャラクターをしっかり立ててから方向性を決めて訳す。
 
 毎回書いているような気がしますが、まだまだ意識が行き届いていません。
 同じsmileでもこの人物がこの場合smileするなら、「ニヤリ」の方が断然よいのですが、私はあっさり「笑った」としてしまいました。難しい箇所や、訳していてヤマ場と思われる場所ばかりに意識が集中し、細部をおろそかにしては駄目だなあと反省。
 またしゃべらせ方もポイント。今回はナンパ男が、中年女性を手練手管で籠絡する場面だったのですが、この場合、白と黒に分けるなら、落とそうとしている男は「黒」で、何も知らない女は「白」です。
だとすれば、対比が際だつようにしゃべり方も考えなければいけません。「白」の女性は上品なしゃべり方の方が対比がくっきりします。私は、その女性にちょっとはすっぱなしゃべり方をさせてしまったため、男と同じ穴のムジナみたいな感じになってしまいました。
 

2 独りよがりになっていないか?意図は読者に伝わっているか?

 ある場面で、he said casuallyという文に「淡々と言った」という訳をあてたのですが、先生は「冷ややか」にとされていました。個人的には「淡々と」にも冷ややかなイメージがあると思って使ったのですが、よくよく考えてみれば「淡々と」って「冷ややか」よりももっとニュートラルな感じですよね。
 
3 違和感のある直訳なら、削る勇気も必要

 男性が女性の肘をつかんで退室を促すという場面を、「ひたと手を添え」という具合に訳したのですが、「ひたとに」当たるsteadyは訳出すると文から浮いてしまうので、ここでは削ったほうが違和感がないとのご指摘を受けました。確かに、たいして意味の無い語で、訳出すると読んでいてひっかかりがあるようなら削った方が読みやすいですよね。英文和訳をやっているのではなく、楽しむための小説を訳しているのだということを肝に銘じなければ。 

4 状況をしっかり把握してから訳す。矛盾は無いか?位置関係など

 訳しながら、登場人物の位置関係などを頭の中にしっかり思い描くこと。
ついつい、訳しただけで安心して場面を想像することを怠ってしまうのですが、結構これで失敗しているような気がします。頭の中で描けていない時は、誤訳していることも多いです。
 しっかりと想像していれば、矛盾にも気が付きます。たとえば、振り向く前に言ったセリフは、振り向いてから見たものについて言及しているはずが無いのですが、きちんと場面を思い描いていないと、そういう矛盾した訳を当ててしまいかねません。


5 調べ物を怠らない

 店の名前などの固有名詞が、英語以外の言語でも、ある程度、読み方や意味を調べないと駄目(当然!という声がどこからか聞こえてきそうですが)。うけねらいの名前が付いている場合もあり、結構重要だったりするので要注意。

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