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今年度初の授業でした。

前年度に引き続きしばらく同じ課題で行くようです。コメディたっちの文なので、訳す側のセンスがかなり問われます。ほとんど人の入れ替わりのないクラスですが、今回はお二人新しい方が入られ、ちょっと新鮮なスタートです。

今回の反省点
1 台詞を訳すとき
 何も考えずに訳しては駄目。キャラクターに合わせて口調を変えるように訳すのはもちろん、同じ人物でも、最初のうちと後の方では口調が変わってくることもあります。例えば出会ったばかりの人としゃべるときと、打ち解けてきてからでは当然しゃべり方が違います。課題箇所のみ読んで訳すのではなく、先まで読んでキャラクターを把握し、どうしゃべらせるのか計画を立てること。

2 状況に合わせて語調の強さの調整
 ものが見えないほど目が腫れ上がっているときに、まぶたの描写(burnnig eyelid)は「ほてった 」だと弱い。もっと強く、「燃えるように熱い」くらいにしたほうが適当。

3 一度辞書の定義を忘れること
  感嘆詞に近い使われ方をしている”terrific”(”まあ、怖い”とかそんな感じに使われているとき)は、辞書にとらわれず文脈にあう言葉を当てはめた方が良い場合がある。
 この後に出てきたactuallyも同様。「実は」と辞書通りに訳すと違和感がでます。「実は」だと浮くなというところまでは気が付いたので、辞書から離れて「あいにく」という感じで訳しましたが、先生はもっと軽くさりげなく「いや、」という感じで訳していらっしゃいました。

4 適切な訳語かどうか
 I can hear the oceanを「海の音が聞こえる」としてしまいました。昔「海のこえが聞こえる」という映画か何かがあって、ついつい引きずられてしまいました。せめて「波の音」にするくらいの気遣いは欲しかった。

5 地の文を台詞調に訳す。
 ~she thought ruefully「.~と彼女は惨めに考えた」というのが直訳ですが、このsheが主人公なので、一人称的に主語をとって台詞調で訳すと躍動感もでて効果的です。副詞であるruefullyも「惨めね」という感じに台詞にしてしまう。これは私もできたのですが、ここは上の3とダブりますが、主人公の性格状況を考え合わせて語調を考えるべきところ。ここではそれほど惨めな状況でもなく、本人の性格も気に病むタイプではないので、ruefullyに引き摺られずにもっと軽く訳した方がよかったです。先生は「やんなっちゃう」位にされていました。

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The Firm J・グリシャム著

今年に入って初めての洋書、読了しました。いつにもましてスローテンポ。引っ越しが入ったせいもありますが、あまりこの本に興味が持てなかったせいもあるかも。仕事柄、おもしろそうかなーと思って読み始めたのですが、いまひとつ響いてきませんでした。主人公の性格が悪いのがちょっとなあ。

 主人公ミッチはロースクールを出たての新人弁護士。優秀な成績で大学を卒業し、大手の法律事務所からも望まれていたが、待遇が格段に良い、地方の小さな事務所に入ることに決める。そこでは、弁護士一人一人にBMWがあてがわれ、家も、誰もがうらやむ豪邸を、破格の低金利ローンで提供される。同僚たちはみな高級品を身につけ、昼食も高級レストラン。極端なほどの高待遇を、「働く弁護士たちが幸せであることが、事務所の利益にもなるからだ」と説明する事務所側。貧乏暮らしで苦労して大学を出たミッチは、経験したこともないリッチな生活に有頂天になる。
 しかし、実は事務所には裏の顔があった。法律事務所という表の顔を隠れ蓑に、マフィアの黒い金をローンダリングしていたのである。新人の弁護士には綺麗な仕事のみをさせて、高給と高待遇を与えておく。後に秘密を知らされても、どっぷりと贅沢に浸った体はもう事務所から離れられなくなっている。
それでも、事務所を離れる人間はマフィアに消されるはめになるのだ。
 FBIの人間から事務所の秘密を知らされたミッチは、事務所の実態を暴き一斉検挙するため、内部から証拠を集めはじめる。

うーん。ミッチがどうもあんまり好きになれませんでした。正義感に突き動かされFBIの人に進んで協力するっていうよりは、協力してやるから金を出せと言う感じで(しかも刑務所にいる殺人犯の兄を逃がせとか無理難題をFBIに要求するし。)、まあ、たくましいと言えばたくましいのですが……。エンディングもなんだかなあ。
登場人物に共感できないと、読書ってノレないものですね。

英語的には読みやすいほうでした。法律用語が多いのが多少難。視点が細々動くのが少し読みづらかったです。(章ごとくらいならいいのですが)

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妊娠カレンダー 小川洋子 著

「博士が愛した数式」で有名な作者の書いた短編集。

妊娠カレンダー 
精神のバランスを崩した姉が妊娠した。姉夫婦と同居する妹は、月が満ちていくににつれ変化していく姉を、なにか異質なもののように冷ややかに見つめている。食べ物を殆ど受けつけない激しいつわりの時機を越えた姉は、それまでの分を取り返すように食べものを摂取し始める。何もかも食べつくすような勢いで、妹の作る食事を、作ったはじから平らげていく。そんな姉に妹は、発がん性物質を含んでいる言われる外国産のグレープフルーツばかりを集め、その皮をたっぷりとつかってジャムを作り、食べさせ続ける。

こうしてあらすじだけを書いてみると、この小説の持つ底知れない怖さがまるで伝わらず、もどかしさを感じる。計算された美しさ。何気ない一場面も計算されてそこにある、という感じがする。こまごまとした要素が相互に絡み合って、独特の、得も言われぬ恐ろしさをかもし出している。

その他、「ドミトリイ」「夕暮れの給食室と雨のプール」以上3編が収められているが、どの作品にも読者の心の奥深くに刻み込むような印象的なシーンがある。ガラス細工を思わせる繊細な文体で丁寧に描き込まれており、読んでいて映像がありありとが浮かんだ。ちょっとフランス映画のような独特の空気。本格的な、正統派の小説家だと思う。

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引っ越ししてました

ああ!気が付けば一ヶ月以上もブログを放置してたんですね。覗きにきてくださっていた皆様、ごめんなさい。
引越業者手配、粗大ごみ手配、各種変更手続き。引越しっていろいろやることがありますねー。
でも、無事引越しがすんでよかったー。壁や天井の薄さに悩み(壁からは、隣の人のいびきの音まで聞こえました。天井も薄くて、上の人が歩くと、吊ってある電気が揺れて、押入れの戸がカタカタなるんですよー。見た目はまともなマンション風だったんですけどねー)、引越し先を探し続けて、約半年、ようやくまともなところに越すことが出来ました。壁から声が聞こえない!とても静かです。今までの生活はなんだったんだー。引っ越した日はうれしさのあまり、涙が出ました。今までは、毎日耳栓をして寝てましたからねー。土日は本も落ち着いて読んでいられなかったので図書館に通ってましたし。
これで、翻訳の勉強にも身が入るというものです。早くペースを戻すぞー。

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