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前回の反省 お当番でした

1 ネタバレしないように、訳す。
 豪華客船から夫に突き落とされたヒロイン。救助してくれた男性に事情を説明するシーンで
"I was thrown off a boat" と言うのですが、これを聞いた男性は、昨日はそんなに海が荒れていたわけじゃないのに船から落ちるなんて?といぶかります。それに対してヒロインは"I didnt get thrown by a wave. I got thrown off by my husband."と答えます。
読めば全く難しいシーンではないのですが、訳すとなると結構難しいところです。とくに、最初の"I was thrown off a boat."。 これを「船から落ちたの」とすると、事故か何かで落ちたような印象を与えてしまいます。かといって、「突き落とされたの」といきなりやってしまうと、後から説明しているシーンが無意味になってしまいます。ここは、波のせいなのか、それとも人に落とされたのか、どちらとも取れる言い方でなければいけません。しかも、きれいな訳にするには、後ろの説明"I didnt get thrown by a wave. I got thrown off by my husband."と同じ表現でまとめなければなりません。
 私は上手く処理しきれず、「船から投げ出されたの」としてしまいました。これだと、波ならOKですが、夫に投げ出されたという言い方をするかというとちょっと無理。後ろの説明部分では同じ表現であわせることができず、「波じゃないわ。私を投げ落としたのは亭主よ」というように、「投げ落とした」に変えてしまいました("投げ"まではなんとか合わせようと頑張りましたが)。
 先生は、原文にとらわれず、最初の文を大胆に「船にのっていたの」とされていました。よく考えれば、落ちていたからこそ助けたわけですし、落ちたという事実はわざわざここで説明する必要ないわけです。テクニックですねー。他にも「放り出した」を使って処理されている方もいらっしゃいました。「放り出した」ならどちらでもOKですね。ただ、私も「放り出された」については考えたのですが、夫に放り出されたというと、どうも別の連想をしてしまうような気がしたので、(家を追い出されたとか、見捨てられたとか。)ここではとりませんでした。

2 口語らしくやわらかく
「昨晩の海はそんなにしけちゃいなかった」という台詞。昨晩っていうことばは口語にしては固い。ゆうべの海ぐらいが自然です。

3 OH!のような感嘆詞はこだわらず文脈で訳す。
 OH!をみたらどこでも同じように訳しがちですが、文脈にそって柔軟に訳しましょう。今回はなんとか上手く訳せましたが、感嘆詞は固定の訳に偏りがちなので肝に銘じたいもの。

4 Busteredのような罵りの言葉も文脈で判断する
 馬鹿丁寧に「ろくでなし」と訳してしまいましたが、その人間を単に言い換えているだけの場合もあるいので、その場合は直訳せず、あいつくらいに抑えて訳す方が、文から変に浮かないで自然です。

5 キャラに合わせた言葉遣いを心がけよう
 若いヒロインの台詞であることを忘れていました。「あなた、お名前は?」では、山の手言葉みたいでちょっとおばさんくさい。

6 I don't know. I swear to God I don't.
 なんで、夫が突き落としたりしたのかと聞かれ、ヒロインが答えた台詞。「知らないわ。知りっこないじゃない」と妙に攻撃的に訳してしまいました。助けてもらった相手に噛み付いてどうする?よく考えましょう。ここは本当に知らないことを強調しているだけの表現。「見当もつかないわ」という感じ。

7 ヒロインの話を聞いて、救助した男性は警察に電話しようとします。しかし、ヒロインは頭の中を整理したいから電話するのは待ってくれと頼みます。これに対し、「Let me help you.あんたの亭主がやったことは殺人未遂って奴だ。立派な犯罪だよ」と男性が言うのですが、このLet me help you.が曲者でした。私は直訳に近く、「手伝ってやろうか」という訳文をあてたのですが、妙に偉そうな感じになってしまい、自分でもどうもしっくりしないと思っていました。ここも、直訳に引きずられず、文脈にあわせた自然な訳をつけなければいけない所でした。
「君のためを思って言っているんだ」「いいか」「いわせてもらうが」「そんなの簡単だ」など、自然に上手く処理されている方が何人もおられて、安易な直訳をしてしまった自分が恥ずかしくなりました。

8 今回はお当番で、例のごとく、先生の厳しいつっこみをたくさん頂きましたが、おもしろいとお褒めいただいた箇所も一つだけありました。救助した男性の台詞をちょっとユーモラスな感じにして、訳したのですが、ユーモア小説のような場合、英語でユーモラスな部分でも必ずしも面白い日本語になるとは限らないので、原文で普通の表現がされていても、チャンスがあれば、あえて、ユーモラスな表現を使って訳していくのはよい方法だというお話でした。そこまで考えて訳していたわけではなかったのですが……。

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アカデミーヒルズ 集中できる空間

引っ越すまでは、休日、家でゆっくり本など読みたくても出来ない環境にありましたので、喫茶店に出かけてみたり、誰もいない職場に出かけてみたり、近所の図書館に出かけてみたりと、随分試行錯誤しました。

で、たどり着いたのがここ、アカデミーヒルズでした。六本木ヒルズの49階(あたりだったと思います)にある会員制の図書館です。六本木(しかもヒルズ)というロケーションがちょっとおしゃれすぎていて気が引けましたが、背に腹は代えられず、見学に行ったその日に会員になりました(今は引っ越して家が静かになったのでやめました)。

とにかく眺めがいいです。会員制なので席が足りなくなることはないようになっていますし、早めに行けば窓際の、やたらと眺めの良い席に座ることが出来ます。摩天楼を眺めながら心静かに本を読むのはまた格別の気分でした。超高層階に住みたがる人の気持ちも判る気がします。やっぱり高いところは気分がいいものなんですね。

机や椅子などの調度品もしゃれていて、デザインがよく、ワンランク上の図書館といった雰囲気です。ただ、図書館と言っても本を貸し出すことはなく、館内の本は館内で自由に読んでよい代わりに、持ち出す場合には購入しなければいけません。置いてある本は、ターゲットがビジネスマンだからなのか、やたらに「金持ち父さん的」な本が多かったのですが、集中するにはとても良い環境でした。使っている人達のマナーもよく、とても静かで、家で6時間かかることが2時間くらいでこなせてしまう感じでした。ちょっと気持ちよいくらいに集中できました。月額6300円は大きかったけれど、月1万5000円位のレンタルスペースなどと比べると割安かも。 

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