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邪魔 奥田英郎著

高校二年の康輔は、いわゆる非行少年。長く遊んでいたいので、大学には行くつもりはあるが、勉強する気はさらさらない。刹那的な楽しみに耽ってばかりいる。毎晩仲間とつるんで、自販機から金を盗んだり、かつあげをしたり、三人乗りバイクでパトカーを挑発したりして、巷の注目を浴びるのが楽しくてしょうがない。大人なんてみんなコケ脅し。軽く脅せば皆震え上がって金を出す。だが、その日二人目のオヤジ狩りのターゲットはまるで様子が違った。

くだんのターゲット、久野薫は張り込み中の刑事だった。同僚の刑事を張り込みするという気の重い役目を押しつけられ、クサクサしていた久野は、絡んできた少年達につい本気を出してしまう。その騒動で、張り込み相手には張り込みを気取られ、険悪な関係になる。
そんなとき、所轄内の会社で放火事件が起こり、久野は、内偵めいた仕事から解放され、ほっとしながら、聞き込みを開始する。

恭子は二人の子を持ち、スーパーでパートをする平凡な主婦。しかし、夫が、職場の火事の第一発見者となってから、次第に人生の歯車が狂い始める。第一発見者にすぎないはずなのに、警察からマークされ、会社の人間にも妙に素っ気なく扱われる夫。得体の知れない不安がじわじわと胸の中に拡がっていく。

メインキャラクターはこの三人。だが、おもなスポットは久野と恭子に当たっている。
数年前に交通事故で妻を亡くして以来、不眠症を抱えながら、仕事一筋で生きてきた久野。
全てあなた委せてで、人に与えられた幸せを生きてきた恭子。
幸せに背を向けて生きる久野と、目の前の幸せに固執しすぎたために、崩壊していく恭子。恭子に妻の姿を重ね、救おうとする久野の願いもむなしく、恭子の人生はがらがらと崩れていく。しかし、恭子の姿には悲壮感は余り無い。むしろ、嘘で塗り固められた幸せのメッキが剥げていくことで、恭子は、周りに左右されることのない、強かさを身につけていく。平凡な主婦の仮面の中に埋もれていた恭子自身の個性が次第にあらわになっていく。

スピード感のある筆致で、ぐいぐい引き込んでいく。「最悪」と似たタイプの作品。この作品では女性である恭子の心理がよく描けている(豹変ぶりには少し違和感も感じましたが)と思うが、ジェットコースターのように高速で、一点に集束していく「最悪」の緊張感には今ひとつ及ばない。

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コメント

こんにちは、私のブログにコメントいただきまして、ありがとうございました。遊びに来ましたよ!yukiwarisouさんって、すごく勉強されてますね。すごいな!ブログを拝見してたら、私ももっと翻訳の勉強を頑張ろうという気持ちになってきました。アメリアにも加入されているのですね。トライアルAなんて、私にとっては夢のまた夢だわ・・。
またお邪魔しますね!

投稿: Baran | 2006年9月15日 (金) 16時07分

来てくださったんですね!ありがとうございます。字ばっかりで読みづらいでしょう。Baranさんのブログのように、優しいお人柄がにじみ出てくるようなブログにしたいのですが、どうも堅苦しくなってしまって。実は、友人以外のブログにコメントしたのは初めてでした。よろしかったらまた遊びに来てくださいね。

投稿: yukiwarisou | 2006年9月15日 (金) 23時57分

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