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アキハバラ@DEEP 石田衣良著

いい本を読むと、なんだかじっとしていられなくなる。意味もなく部屋の中を歩き回ったりしてしまう。この作品もそんな本でした。

舞台は、ハードディスクやマザーボードが路上で叩き売りされる電脳の街、秋葉原。

激しい吃音のため、パソコン画面で会話するページ、女性恐怖症、不潔恐怖症で、常に手袋を重ねづけしているボックス、光の点滅をみると、ところかまわず体が硬直してしまうタイコ。三人は、それぞれ問題を抱えながらも、互いの特技(ページは文章力、思考力、ボックスはデザイン力、タイコは作曲力)を生かし、支えあいながら、ホームページの更新といった小さな仕事を請け負って生きていた。

そんな三人を結びつけたのがネット社会のカウンセラー、ユイだった。ユイのホームページ「ユイのライフガード」は、病んだ若者達を癒し、導いていた。三人は、ユイの引き会わせで、色素欠乏症の天才ハッカー、イズムと、元ひきこもりで法律関係に明るいダルマ、コスプレ喫茶でバイトをする美少女ボクサー、アキラと出会い、新たな会社アキハバラ@DEEPを立ち上げる。

アキハバラ@DEEPのメンバーは、皆どこか病んでいて、社会の不適応者ばかり。女性のアキラを除くと、全員がアキハバラの街にしっくり溶け込む、冴えないオタクくんたちである。そんな彼らが、世界を変える検索エンジン、クルークを生み出し、自分達の誇りを守るため、クルークをつけ狙う巨大なIT企業に挑んでいく。弱きものたちが、巨悪に立ち向かうという定番の構図ながら、その闘い方には、現代の若者を象徴する「楽しむ」という要素がしっかりと盛り込まれている。オタクくんたちが最高にかっこよく見えてくる。胸のすくような冒険活劇である。

昨年あたり(もっとまえか?)、映画化もされていたようですが、いつもながら、この人の美しい文章を本で読まないのはもったいない!と思います。誰にでもわかるやさしい語り口でありながら、物足りなさを感じさせない。メッセージ性がとても高いのに、軽快で説教臭さをまるで感じさせない。文にあわせて散りばめられた比喩の美しさには、いつもうっとりさせられます。鋭い感覚で時代を切り取りながらも、その目はかぎりなく温かい。青臭いっていう人もいるんだろうなとは思いますが、こういう青臭さをなくしたときから人は老けるのではないかと思います。わたしは大好きです。

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ぐぐるとは、グーグルで検索することをいいます。ぐぐる人は、かなり多いです。 [続きを読む]

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