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「博士の愛した数式」 小川洋子著

寺尾聡主演で映画化もされた、いわずと知れた名作。文庫化を待っていたら、読むのがちょっと遅れてしまいました。

家政婦の「私」が新しく派遣された先は、記憶障害を持つ数学者「博士」の家だった。博士の記憶は80分しか持たない。時間が経過すると、一からやり直し、初対面の挨拶から繰り返されることになる。博士は、失われた記憶能力を補うため、無数のメモをシャツにとめている。そんな博士をいたわり気遣う「私」と「、私」の息子「ルート」。そのいたわりは決して憐憫ではない。博士に対する強い尊敬と愛から、自然と生まれている。博士は、人知を超えた美しい数の世界に生きている。神のわざともいえる、その整然とした法則の前で、博士は謙虚に頭を垂れる。その姿はとても美しい。蓑虫の蓑のような、無数のメモの下には、輝ける崇高な魂が隠されている。

三人が紡ぎだす、美しく、悲しく、幸せな空間。悲しみと幸せがこんなにも美しく同居できるとは知りませんでした。この小説の世界にずっと浸っていたい、そう思わせてくれる作品です。小川洋子さんは薫り高い世界を書くことのできる、数少ない現代作家だと思います。作品の気高さは、明治の文豪にもひけをとりません。もし、私に日英翻訳が出来たら、こんな小説を、世界中の人たちに知らせたいなー。

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