前回は仕事が押してしまい、授業にだいぶ遅れてしまいました。気になっていたところを聞き逃してしまった。残念。翌日申し立てたい訴訟は、もうちょっとだけ早く書類を渡してねー。先生。
1 まとめすぎ
下訳の復習のときなど、先生の訳文を見ていると、そのまま訳すと冗長になってしまう文章をコンパクトにまとめておられます。見習いたいと頑張っているのですが、見当違いのところで、しかもやりすぎてしまっているようです。自分でもやり過ぎかなーと思いつつも、どのくらいまでなら許されるのか、今は手探りしている状況です。今回はあきらかに×。原文が細かく動作を描写しているのに、Aという動作とBという動作を足したら、Cという動作になるよね、と勝手に解釈し、Cという動作で訳してしまいました。原文から離れすぎると、原文の味を消すことになってしまいます。今回は、スピード感を出したかったのと、どこまでやっていいのか探る意味もあって、あえて数箇所でやってみましたが、やめておいたほうがいいようです。
2 目線
THe blow looked light, 直訳だと、「その一撃は軽く見えたが」。その後に、殴られた相手は部屋の端まで飛ばされたというような文章が続きます。この作品は、三人称主語なので、「見えたが」としてしまうと、誰の目線なんだ?(神様目線?)という感じになってしまうのが気になり、悩んだところでした。皆さんも、同じように感じられたようです。わたしは、「見えたが」ははずして「軽く当たっただけで」とちょっとずらして訳しましたが、そうか、主人公目線にしておけばよかったのか。三人称主語でも主人公がいる場合、主人公目線で一人称的に訳す場面が多いのですが、ここもそうしておけばよかったようです。先生は「加減をしたつもりだったが」。その後も、殴った相手は、「部屋の『向こう』までよろめいて『いった』」という具合に、視点を主人公に定めて、ぶれのない訳をされていました。
3 欲を抑える。
パンチの威力を表わす文章だったので、殴られたら、「よろめいた」より、「吹っ飛ばされた」の方が強そうでいいよね、思ってしまいました。作者を無視しない。自分の欲は抑えること。
4 辞書にひっぱられない
倒れた男の手はスーツケースの中に”drape”していたというシーン。drapeを辞書でひくと「だらりと下げる」という定義がみつかります。日本語のドレープのイメージもそんな感じですし、男が殴られて床にへたり込んだ状態だったということもあり、あまり違和感を感じることなくそう訳してしまったのですが、後ろの文とうまくかみ合うように調整して訳すべきでした。その後スーツケースから出てきた手には拳銃が握られていました。男はどちらかというと意図的にスーツケースに手をいれたと考える方が自然です。自分でもそう考えていたはずなのに、辞書に引っ張られてしまいました。「だらりと下がっている」と訳すと偶然手がスーツケースに入ってしまったという感じが強くなってしまい、後ろの流れとあわなくなります。調整してもう少し意図的なニュアンスがでる訳(「突っこむ」など)をつけるべきところでした。
5 ひねくりすぎ
銃をかまえた男に向かって、主人公が"If you want trouble, I come from where they make it"というと、男は"Make some with this"といって銃を撃ちます。主人公の台詞の方は「トラブルを起こしたいなら、こっちのほうが専門家(本家本元とか)だ」と言う感じだとは思ったのですが、「専門家」と言うことは、「トラブルをたくさん扱っている」→「売るほどある」→「間に合っている」という具合にひねっていって、結局、「けんかを売りたいのか、あいにく間に合っているんだがな」というふうに訳しました。"Make some with this"のほうも、「じゃあこいつはどうだ」という感じだとは思いつつも、「間に合ってるんだがな」に呼応させて、「まあそう言うなよ(「そういわずにこれでもくらえ」の変形、のつもり)」と、かなり意訳してしまいました。ちょっとひねくりすぎたかも。時間があるといろいろいじくりまわしてしまいます。もっと短い時間で訳してみたほうがいいかもしれません。
6 時間差
The bureau mirror splintered and glass flew. A sliver cut his cheek like a razor blade.そのまま訳せば「鏡が割れ、ガラスが飛び散る。破片が剃刀の刃のように頬を切った」となりますが、「ガラスが飛び散る」で、いったん動きが完了している感があるので、そのあと「破片が~」と続けると、なんだか、いったん飛び散って床に落ちたガラスの破片が、フィルムの巻き戻しみたいに、もう一度空中に舞い上がって頬を切ったようで、ちょっと違和感がありました。皆さん同じように感じられたとみえて、いろいろな処理をされていました。わたしは、完了感のつよい「散り」を取って、連続した動きに見えるように二つの文をひとつにつなげ、違和感の軽減を計りましたが、まだちょっともたつきが残っていました。先生の訳を見て、そういう手もあったのかと納得。後半部分を、「破片が頬を切る」のような動きの訳ではなく、切った後の状態の訳、「(剃刀の刃で切ったような)傷ができる」とされていました。これなら完了感の強い前半の文章「ガラスが飛び散る」の後に来ても違和感がありません。なるほどー。
7 細部まで気を配る
自分でも微妙に違和感を感じつつ、「拳銃を(相手の手から)払い落とす」としてしまいましたが、先生は「はたき落とす」。払い落とすだと、埃か何かのようです。違和感を感じたら、最後まで妥協しないで訳すこと。
8 アクションのシーン
喧嘩のようなアクションシーンでは、現在形を多用して臨場感を出すとよいとのお話しでした。また、もたつかないように主語を主人公に定めて一人称的に訳すのもポイントです。そこで、試しに、主人公を主語にして、相手のほうは全く主語に立てない(無生物主語を使ったりして処理する)訳文もつくってみました。ちょっと不自然でした。主人公目線を常に意識しつつ(一人称的に なるべく主語を出さないようにして)、不自然にならない程度に相手も主語に立てる(少なめに)のが良さそうです。
9 なにが主情報か
流れを見失わないこと。二文になっていた原文を、スピード感をだすため一文にして訳しましたが、そのために、文の関係が不鮮明になってしまいました。「相手のパンチを受けたが、相手の髪から『手を離さなかった』」というのが肝の文章でしたが、次の文とつなげて「相手のパンチを受けたが、笑って相手の髪をねじり上げた」というような訳にしてしまい、肝心の肝が良く分からなくなってしまいました。文章の因果関係もねじれてしまっています。肝が明確になるように訳すこと。文章が切れているのは切れているなりの意味がある場合もあるので要注意。
10 語順 分詞構文
よくやってしまうのですが、"he went down on his knees yowling." のような分詞構文(だったっけ?)のときに、何も考えずに原文の語順のまま「膝をつき、うめき声をあげた」のように訳してしまいます。ここでは、明らかに逆の方が順番として自然。自然な順番に並べ替えてやくすこと。
11 しつこい訳
「(相手に)タオルを『投げ』、スーツケースをベットの上に『放り』、荷物をなかに『投げ』こんでいった。」というようなしつこい訳をしてしまいました。原文の強さにひきずられています。勢いをだしたいのだとしても、ひとつで充分に伝わります。似たような訳語を続けないデリカシーも忘れないこと。
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