「グロテスク 桐野夏生著」読了 あと、ちょっとうれしかったこと
通勤電車で桐野夏生の「グロテスク」(上)(下)を読了、日本語への渇きがちょっとおさまりました。圧倒的なパワー。以前、本屋さんで立ち読みしたときに、引きずり込まれてそのまま30分読み続けてしまった本で、ずっと気になっていたのですが、「OUT」を読んだときに、リアルすぎて気分が悪くなり(夫の死体をバラバラにする描写や、覆いかぶさってくるような閉塞感がたまらなかった)上巻のみでギブアップしてたため、なんとなく手が出なかった。しかし、自分の世界に否応なしに引きずり込む、このパワーはすごい。読み終わった後も、頭の中で大きな渦が巻いているようで、なかなか現実に戻れず、ぼーっとしてしまいました。東電OL事件をモデルにしたと言われている小説ですが、そんなこともどっかに飛んでしまうくらい。子供のころから「頑張れば認められる」という神話にすがりついてひたすら努力してきたエリートOLが、社会に出てどんどん壊れていく様子は、並みのホラーよりもずっと怖いです。でも、怖いだけじゃないんです。タイトルどおり、グロテスクな世界のはずなのに、一本通ったような美も感じるのはなぜなんだろう。薄っぺらな感想を書くと、作品を汚してしまいそうなので、とりあえずはこのくらいで。
久しぶりに読書の楽しみに浸っていましたが、少し前にちょっとうれしいメールをもらいました。だいぶ前に、翻訳のクラスの飲み会でお勧めした本を、クラスメイトのおひとりが最近読まれたらしく、衝撃をうけたとメールをくれたんです。普段、メールのやり取りなどをしているわけではなく、突然、本の感想だけ書かれたメールがきたので、少し驚きましたが、そのぶん、本当に感動してくれたんだなーとおもうと、なんだか、鼻が高いというか(自分で書いたわけじゃないんですが)、うれしかったです。自分の薦めた本が、誰かのこころを動かしたのかと思うと。本好き冥利に尽きますねー。翻訳の醍醐味もそんなとこにあるのかもしれません。
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