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自主練その②

今回、セリフ満載の本を訳してみて、自分の英語力不足を痛感。翻訳するからには、ネイティブの微妙なニュアンスまで感じ取れないといけないのだけれど、留学経験もなにもないわたしにとっては簡単なことではありませんでした。とにかく頼りは文脈だけという状態でした。それは、悪いことではないと思うけれど、文化的な背景や、日常的に交わす会話のニュアンスなどがわかっていればもっと楽に訳せたと思います。

そこで、効果はあるのか不明ですが、前にも書いたとおり、アメリカ人とペンパルになってみました。日本語が上手すぎてネット外人じゃないのか?という疑惑を抱いていたのですが、最近はその疑惑も晴れつつあります。日本人ならつかわない顔文字を使うし、普段はとってもうまいのだけれど、急いで書くと日本語が崩壊するし。極めつけは興味があるのが忍術だということ。これはほぼまちがいないく「本物」でしょ。(日本人には、なかなかいないですよねー)

しばらく日本語でメール交換していたのだけれど、なんだか間抜けな気分になってきたので、そのひとも誘って一緒に前述のSNSに登録しました。お互いの日記を添削しています。日本語が達者な人なので、わからないところを日本語でも聞けるのがありがたいですねー。このサイトなかなかgoodです。とにかくレスポンスが早い。英語で日記を書くと、ネイティブの人たちがすぐに反応し、添削してくれます。ライティングは英日の翻訳には直接関係ないけど、文法の復習にはとても効きそう(文法書だけ読んでいてもつまらないし)。こまかい冠詞などに注意が向くようになるのもいいですね。(a とかtheを見落としたばっかりに大誤訳!というのは結構ありがち、なので)

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自主練①

下訳は終わりましたが、翻訳のために時間をとる習慣はすっかり定着。問題はそこで、何をやっていくか。ここ1か月ほど試行錯誤していました。

課題にかける時間を短くして強制的にスピードアップしようかとも考えましたが、授業の予習復習については、いままでどおり時間をかけて全力でやることにしました。

かわりにスピードアップ対策として、去年下訳をやらせて頂いた原書をもう一度訳し直すことにしました。一度やっているので、ハードルは低いし、復習も一回しているので、自分が学び取ったことをちゃんと身につけることができたか、確認することが出来ます。ポイントを素早く見抜いて訳すための練習にも効果的なのでは?少しずつやっています。なんとか、習慣化したいところ。

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誕生日だったー

この年になるとあんまりうれしいもんでもないが、誕生日というのはなんとなく思いにふけってしまうもの。おもわず来し方を振り返ってみたりして。10年前の自分が今の自分を見たらどう思うんだろう。満足するだろうか?がっかりするだろうか?ものすごく進歩した気もするし、たったこれだけしか進んでないの?という気分にもなる。でも、とりあえず、翻訳に出会えたことで世界が大きく変わったことだけは確か。上手くなりたいというのが原動力になって、いろんなことにチャレンジして、いろんなこと興味をもつことができた。世界がぐんと広がった。

10年前の自分は進むべき道もわからず暗闇でまごまごしていた。いまも暗闇には違いないかもしれないけれど、少なくとも方向だけはわかっている。それだけでも進歩!ということにしておこう。

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前回の復習

今回から新しい課題。いわゆる法廷ものです。調査不足のための不適切な訳が多かった。専門用語など、定訳がある場合は、きちんと遵守すること。やっぱり、その分野の本を、少なくても1冊は読んでから取り掛かるべきでした(注文はしてたんだけど、間に合わなかった・・・)。ようやく届いたので(でも原書はまだ来ない~)、アメリカの刑事訴訟手続きの本と照らし合わせながら読んでいるところです。

・つながりが悪くてもねじまげない
 ①自分の誕生日に②極悪人と面会しなければならない。原文では一文だけど、どうもつながりが悪かった。一旦切ってしまう手も考えたけど、なるべく原文にあわせたい。そこで、こういうのあり?と問いかける意味で、andを逆接にとって訳してみたが、やはりちょっと色がつきすぎてしまった。冒頭で、まだ読者がキャラを把握していない段階では、ニュートラルにすべき。フライング気味。

・とったままで
 主語をどのくらいカットするか、いつも悩んでしまう。かなり取ってしまった後で、これじゃわかんないんじゃない、唐突すぎるんじゃない?と不安になって、所々戻したりしているのですが、わたしの場合、だいたい戻しすぎ。大丈夫、ちゃんと通じるから。そのままにしておくこと。迷わないこと。

・一文の取り違いで総崩れ。
good qualitiesを「男の性格の中では長所の部類」という方向で訳したために、それにあわせ、直前に書かれていた精神科医の分析についても、名詞的ではなく形容詞的に直してしまった。また、長所という方向で訳すと、後ろに出てくる「モンスター」は、短所(悪い面)になってしまう。ナルシストが長所(良い面)でモンスターが短所(悪い面)っていうのも変な話(強いて言えば両方短所)で、自分でもこのふたつの文のつながりが良くわかっていなかった。つながりが良くわかっていないので、そのあとの「文書に残すな」も、どこにかかるのかわからず、逃げ腰の訳に。もし、全てを記録に残すなということだと、鑑定という言葉も使えない(裁判の証拠にするために文書にするのが鑑定なので)よなーということで、そこでもごまかしてしまい、なんか全体的にぼややーんとした訳になってしまった。一文を理解しなかったために一段落総崩れ。あいまいな訳になってしまうということはわかっていない証拠。明確な訳が可能になるまで、きちんと理解すること。

・ひっくり返す技
 違和感を感じつつも、どうしようもなく使ってしまった依頼人という言葉。そう、ここでは依頼されたわけじゃないのだ。ひっくりかえせば解決でした。ちらっとは浮かんだんだけどなー。ここはやっちゃって良いところ。

・語順
 犯行の説明の部分。読みやすくするためと、殺害という言葉を繰り返さないため(うまくやらないと、妻が殺されたことを何度も書くことになりそうだった)に、時系列で、「保険金を掛け、ごろつきに殺しを依頼」というかんじで訳し、殺害についての描写はあとでくるようにした。先生訳は「容疑は妻殺し」というように最初にまとめ。後はその詳細説明という形にして、もう一度出てくる殺害という言葉は「犯行」という言葉で避けていらっしゃいました。うーん、こっちのほうがすっきり。なかなかこの「最初にまとめる」技ができないなー。(あらら、今気がついたけど、わたし方式でいくなら、後半は「殺した」を使ってよかったはずなのに、うっかりして後半まで「殺す」を避けてしまってる。おばかー)

・死んでいく音を聞く?
 これは具体化(もしくはごまかす?)しないとだめだろう、ということで具体化してみましたが、案の定やりすぎ。この段落は、事件の悲惨さを書いているところだから、強調方向でやってみようと思ったのですが・・・。やっぱりだめかー。いや、だめだとは思ったんだけど。先生訳のような具体化なら違和感なし。

・法律用語はいい加減に使わないこと
とにかく、しっかり調べましょう!該当箇所多すぎ。きちんと気配りすること。

・またもや、違和感センサーが誤作動?
 心変わりという言葉を聞くと、どうも色恋沙汰のイメージが浮かんでしまって。わたしのセンサーは変なときに働いちゃうので困ります。

・椅子がないとき
 英語ではsit downと書いているのに、座るべき椅子がないことがたまにある。椅子をプラスするか、座るをマイナスするかだろうなと思い、座るのほうを消してみた。ここではOKだったみたい。

・逆方向の形容詞 矛盾解消
 「折り目のついた、しわのない」という表現に違和感を感じた。皺がないというと、つるっと滑らかなイメージ。折り目という言葉とは矛盾しちゃうんじゃないかと「アイロンが効いた」という言葉を選択。センサーは正しく作用したらしいが、それでも囚人服の形容としてはちょっと不自然。先生訳なら自然。先生は、普段擬音語は避けられますが、ときどき、効果的に使われます。

・プラスすべきことはプラス
 答弁すると原文になっていても、文脈でどちらの答弁か、明確にすべきところであれば明確にする。日本語同様、英語でも、自明のことは省略されるので注意。

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おっかしーなー

今度から、授業の課題は法廷もの。前回までのコメディーものの気分をひきずらないようにしなくちゃーと気合を入れていたはずなのに。昨日授業で他の生徒さんが紹介なさっていた「法律英語入門もちゃんと買って読んでたし。アメリカの刑事訴訟手続きも、頭に入れようと思って本に載っていたチャートを書き写したし。

だが、それ以前の問題でした。そんな本には出ていないほどの基礎の基礎の用語がなってなかった。知らなかったー。裁判官と判事って違うのね。(まだちょっとわかってないかも。)起訴と告発もわかってたはずなのにー。いい加減な使いかたをしてしまった。

恥ずかしくって、法律事務所勤務(でもうちは民事専門なのだー)で、しかも、大学時代は刑事訴訟法ゼミにいたとは、口が裂けてもいえない(;´д`)トホホ…(と、いいつつネットで公言してますが・・・いや、楽なゼミだったのよ。先生は元検事だから、いろいろコネが効いて、刑務所やら、裁判所見学やらに連れてもらえたし)。

今回は自分がどうしてそう訳したかを、言葉にしてノートにまとめておいたので、ゆっくり土日にチェック(こたえあわせ)してみよう。しかし、文章がどうとかいう前に、まず事実はしっかり調べないと! 調べたつもりで調べ物が甘いっ、甘すぎる!わたしの悪い癖だ。どこか心の奥底で、調べ物を軽視してしまっているのかも。調べ物も翻訳の仕事だということを肝に銘じなければ。しばらくは、ノンフィクションを訳すつもりでやってみよう。(でも、クラウンとるのもノンフィクションのほうが時間かかってしまったし、どうも苦手みたいなのよねー)

法廷ミステリーも何冊か買っておいたので(原書もセットで買ってみた)、しっかり読んで研究することにします。こうなったら法廷マニアになってやるー。

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祝!脱稿

ついに、先生の最終原稿が送られてきました。祝 脱稿!ヽ(´▽`)/ いやーめでたいめでたい。本はいつごろ出版なんだろう。やっぱり文春文庫なのかしら・・・・。コメディー文体に苦労した分、本屋さんで書影を拝める日が楽しみです!

早速、はらはらしながら、自分が担当した最終章(前半)をチェック。ああ、よかったー、とりあえず、むちゃくちゃひどい誤訳はなさそう(;´▽`A`` 自己採点甘すぎ?でも、自分の実力から考えたら奇跡に近いわー。(そこで満足してちゃいけないんですが・・・問題はその後、どれだけ楽しめるものにするか)

先生の元の原稿と、最終原稿も、比べながら読んでみました。これは・・・相当勉強になりそう。生き生きとした作品にするってこういうことなのね。ほんとに妥協しないなー、先生。それにしても、先生ほどの翻訳家でも、これだけ推敲を重ねるんだから、売り物にするっていうのは本当にたいへんなことなんですね。

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備忘録として 最近読んだ3冊で使われる人称

最近読んだ3冊

「グロテスク」 日記形式、一人称のみ 迫力あり

「コンビニ・ララバイ」 三人称をきれいに保ったまま、ところどころ一人称的になる文章

「椿山課長の7日間」 かぎりなく一人称的な三人称 ところどころ神様(作者)目線が入るのがおもしろい

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「椿山課長の7日間 浅田次郎著」読了、&ふと感じた翻訳への畏れ

ああ、また罠にハマったー。泣かせるんだろーなーと予測はしていましたが、作者の思惑通り、滂沱の涙 ラストのほうは文字もろくに読めない有様。あっさりとハメられちょっとくやしい気も。浪花節的なところが、文学通には敬遠されてしまうのかもしれませんが、エンターテイナーとしてはやっぱり一流だと思います。

キャラクターはある意味類型的です。主人公たちの性格もかなりわかりやすい。仕事の鬼で家庭は妻にまかせっきりの熱血デパートマン、任侠と渡世の世界に生きる、古きよきヤクザ等など・・・ひとことで、ある程度書き表せてしまうくらいわかりやすい。でも、すごいのは、その類型に向かってとことん磨き上げていくところ。せりふ、行動、嗜好など、ディティールをすべて、同じベクトルにあわせて積み上げることで、キャラクターを明確に浮かびあがらせている。

どのエピソードも無駄には書かれていない。椿山課長が新婚旅行のワンシーンを思い出す場面では、さらりと、ふたりが寄り添っていたハワイのビーチが人工のものであることに触れられている。その先の結婚生活が、偽りのものであることを暗示するひとことだ。読み飛ばしてしまいそうな一文にも、意味がこめられている。しっかり計算されている。怖い作家だー。思わず、下訳を終えたばかりの某作家の文章を思い出してしまった(雰囲気はだいぶ違うけど)。この本を訳す翻訳家は苦労するんだろうな。同情してしまう。コミカルで思わずにやりとしてしまう文章も、きっと再現が大変だろう。誰だかわからないけど、君の苦労は良くわかるぞー。

それにしても、こうして母国語で良い本を立て続けに読んでいると、外国人がそれを読んで、ネイティブと同じように深く味わい、魅力を損なわずに再現するなんて、(ほんとに一握りの才能あふれる翻訳家でないと)無理なんじゃないかという気分になってくる。なんだか、無謀なチャレンジをしているような、風車に立ち向かうドンキホーテの気分。

もしわたしが翻訳家で、ものすごーくいい本を訳すチャンスに恵まれて、でもその魅力を損なわないだけの力量がない場合、どうすればいいんだろう、と愚にもつかないことを考えてしまった。でも、これはかなりのジレンマだろうなー。惚れ込んでしまうほどのいい本、出来れば自分が訳したい、でも力量不足で、自分が訳せば大好きな本の魅力を損なってしまうのは目に見えている・・・・。もしかしたら、血の涙を流しつつ、他のもっと実力のある方にお願いしてしまうかも・・・。その方がその本のためには幸せだものなあ。(ありもしないことで悩むとは我ながらひま人・・・

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今回試してみてよかった方法

訳し方は十人十色、皆様それぞれに工夫されていることと思いますが、今回の下訳で試してみて、悪くはなかったなと思うことを、備忘録として書いておこうと思います。

・アホな事務員に指示する方式

 あるサイトを見ていたら、効果的なTo Doリストの作り方という記事に、「新人の、使えないアシスタントに指示するように、仕事を小分けにする」というようなことが書いていました。「なるほどー、たとえば、私のようなヌケた事務員に仕事をさせる、弁護士の気分になればいいのね」と、翻訳の際にも応用してやって見ることにしました。結構良かったです。原文を読んだ段階で、「これはネットで調べる」「これは類語辞典を引く」という風にあらかじめ印をつけておく。そうしておくと、いざ訳す際に、「さーどこから手をつけよう」と途方にくれることが少なくなります。とりあえず、とっかかりにはなるかも。

・段落ごとに、かんたんなまとめをして、原文の横にメモっておく

まとめといっても、ひとこと、二言程度でしたが、これは、後から、「あれ、関連する記述がどこか前のほうにあったな?」というようなときに、すぐに探せて、ちょっと便利でした。

単語の意味も最初、原文下にメモしていましたが、読む速度も遅くなるし、訳すときにスピードアップ効果があるかも微妙でした。最初に読むときに、単語の定義をある程度絞って、メモっておけば、訳すときにいいかと思ったのですが、原文のテキストファイルがあればワンクリックで辞書引きできますし、訳出の際に再度引くのは間違いないので、これは意味があったのかどうか?粗訳は早くできますが、誤訳も多くなるような気がします。成句などは引いて、書いておくと便利でした。

・マーク付けてチェック

自分がやりがちな間違いをマーク(「調査必要」は☆、「語順を変えたほうがいいかも」は↓といった感じで)にして、訳文をチェックしながら、該当するところに振っていく。いろんな記号を考えていたんですが、結局、漢字一文字のほうがいいような気が。ぱっと見てわかるし。表意文字は偉大ですね。

・核の部分に蛍光ペン

作者が言いたい核の部分に蛍光ペンを塗り(訳文のほう)、常に意識にとめるようにしました。今回のように、一文にたくさんの情報をこめてくる作者の場合は、主情報をしっかり受け止め、その部分を際立たせて訳出することが必要。塗るだけですが、意外と効果的でした。

・一旦骨にして、肉付け

上とかぶりますが、訳すのが難しい原文のときは有効

・何で違和感あるのか言葉にしてみる

 復習するときにはいつもやっていることですが、時間はなくても訳すときにもやったほうがいい。漠然と感じている違和感を、自分がどうしてそれを感じるのか考え、言葉にしてみたら、解決方法が見えてきたことが何度かありました。

・ホワイトボートに自分のやりがちな問題点を書く

こまめに書き換えるほうがいいかも(すぐに日常の景色に溶け込んでしまうので)。書くこと自体がいい感じ。

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コンビニ・ララバイ 池永陽著 

いい本を読むと、なぜか、座っていられないような気分になって、部屋中を落ち着きなくぐるぐるまわってしまったりするのですが、この本もそんな本でした。昨日の夜は枕元にティッシュの山が出来てしまった。(涙腺がゆるいもので)

以前読んだ「走るジイサン」は、息子の嫁に恋心を抱くジイサンの頭上に、ある日突然猿が現れるという奇妙奇天烈な設定。なのになぜかリアルで引き込まれるのは、人物にしっかりとした影があるから。正義感があって真っ直ぐで・・・なんていう、二次元の薄っぺらいヒーローはこの人の作品には登場しない。

この「コンビニ・ララバイ」の登場人物たちの足元にも濃い影がちゃんとある。舞台は町の小さなコンビニ、ミユキマート。オーナーは交通事故で妻と子供を亡くした幹夫。幹夫の持つ、やさしい暗さがコンビニを訪れる人たちの心のひだを撫ぜる。

皆それぞれの人生の中でもがいている。万引きを繰り返す女子高生は、彼氏の命令で中年男と援助交際をしながらも彼を嫌いになれない。水商売の克子は、真剣に結婚を申し込んできた客の石橋に心を動かされながらも、どうしようもないヒモ男の栄三と離れることが出来ない。劇団員の香は役めあてで妻子もちの演出家小西と寝るが、それでも役をもらえず、恨みながらも小西への尊敬の念を捨てきれない。

こんな場合、この彼氏やヒモ男や演出家を、悪役で描いてしまえばすっきりするのだろうが(でもチープになるのは間違いない)、この作家はそうはしない。悪役であるはずの彼らを、人間的で、ある種魅力的でさえある人物として描く。この人の描く愛は、ピンク色のお菓子のような愛ではなく、こすってもこすっても落ちないどす黒いシミがついたような愛だ。

解説で北上次郎さんが、この作品を評して「重松清と浅田次郎を足したような小説」と書いているが、私はさらに石田衣良も足して、そこから重松清と石田衣良の青臭さ(←これが好きなところでもあるんですが)をぬいたような作品という感じがする。少し引いて、現実の醜さを見据えながらも、それでいてとてもやさしい目線だ。人間ってあほだね、しょうもないね、でも、なんかいいよね。そういってる感じがする。

挿話や小道具の使い方が効いている。たとえば、水商売の克子が、ヒモ男栄三のゴワゴワした硬い髪が立てる音を聞くたびに思い出す、生まれ故郷の「わら布団」。ひなたの匂いとわらの音。貧しさと暖かさ。幼い日の思い出。帰りたくても帰れない故郷。わら布団を出したことで、ぶわっと世界が広がっていく。どうしようもない男なのに、なぜか別れられない気持ちがリアルに伝わってくる。うまい作家だなあと思う。

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久しぶりに授業 

おとといは久しぶりに授業。クラスのみなさまにお会いできるのも久しぶり。まともに課題をやっていったのも久しぶりでした(下訳中はだいぶさぼっちゃってたので)。今回は、ぎりぎりまで課題に手を付けず、強制的に短時間でやるよう自分をおいこんでみたのですが、やっぱり詰めが甘くなっちゃいますね。普段なら、もうひとひねりしていたところが、触れないままで終わっちゃう。何とか時間と質の兼ね合いを見て調節できるようにしたいものです。それとも、やっぱり、まだ、スピードを考える以前の段階なんだろうか。

次回からは新しい課題。下訳でさんざん苦労した課題だったけど、終わってしまうのも淋しい気が・・・。でも、今度からはリーガルミステリーなので、気持ちをすっぱり切り替えないと。ひきずって、原文をいじり過ぎないようにしないとな。客観的に、原文を大事に訳すようにしよう。

下訳が終わってから、自分で掲げた今後の課題に具体的取り組むべく、気晴らしもかねて、ちょこちょこ新しいチャレンジを始めてみました。

英米の文化への理解を深めようと、シェイクスピア関係の本を読んだり(かえるさん、記事ご紹介ありがとうございました。「シェイクスピアの英語で学ぶ、ここ一番の決めゼリフ」はさすがマガジンハウス出版、気軽にシェイクスピアに親しめて、ポイントはしっかり抑えられた、なかなか楽しめる読み物でした)、ペンパル募集のページなんかも見てみたりしました。アメリカ人とペンパルになればライティングの勉強も出来るし、わからないことがあったら気楽に聞けるし、一石三鳥?と思ったんですが、日本人のペンパル募集しているという18歳の女の子にメールしてみても、まるで音沙汰なし。やはり、ジェネレーションぎゃっぷがありすぎたか?28歳のユタ州在住の男性はメールをくれましたが、勉強のため日本語でメールしたいといっているので、なんだか本当にアメリカ人とメールしているのか疑問。日本語うますぎるし。ネットおかまならぬ、ネット外人だったりして。ちょっと、自分でも何やってるんだかなーという気分になりつつあるので、アメリカ人のペンパルをもつ野望は早々に捨てることになるかも。その代わり、外人が日本語で書いた日記を添削してあげると、自分が英語で書いた日記をネイティブに添削してもらえる、という相互扶助SNS?のようなものを発見したので、ちょこっとのぞいてみようかなと思っています。

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