今回から新しい課題。いわゆる法廷ものです。調査不足のための不適切な訳が多かった。専門用語など、定訳がある場合は、きちんと遵守すること。やっぱり、その分野の本を、少なくても1冊は読んでから取り掛かるべきでした(注文はしてたんだけど、間に合わなかった・・・)。ようやく届いたので(でも原書はまだ来ない~)、アメリカの刑事訴訟手続きの本と照らし合わせながら読んでいるところです。
・つながりが悪くてもねじまげない
①自分の誕生日に②極悪人と面会しなければならない。原文では一文だけど、どうもつながりが悪かった。一旦切ってしまう手も考えたけど、なるべく原文にあわせたい。そこで、こういうのあり?と問いかける意味で、andを逆接にとって訳してみたが、やはりちょっと色がつきすぎてしまった。冒頭で、まだ読者がキャラを把握していない段階では、ニュートラルにすべき。フライング気味。
・とったままで
主語をどのくらいカットするか、いつも悩んでしまう。かなり取ってしまった後で、これじゃわかんないんじゃない、唐突すぎるんじゃない?と不安になって、所々戻したりしているのですが、わたしの場合、だいたい戻しすぎ。大丈夫、ちゃんと通じるから。そのままにしておくこと。迷わないこと。
・一文の取り違いで総崩れ。
good qualitiesを「男の性格の中では長所の部類」という方向で訳したために、それにあわせ、直前に書かれていた精神科医の分析についても、名詞的ではなく形容詞的に直してしまった。また、長所という方向で訳すと、後ろに出てくる「モンスター」は、短所(悪い面)になってしまう。ナルシストが長所(良い面)でモンスターが短所(悪い面)っていうのも変な話(強いて言えば両方短所)で、自分でもこのふたつの文のつながりが良くわかっていなかった。つながりが良くわかっていないので、そのあとの「文書に残すな」も、どこにかかるのかわからず、逃げ腰の訳に。もし、全てを記録に残すなということだと、鑑定という言葉も使えない(裁判の証拠にするために文書にするのが鑑定なので)よなーということで、そこでもごまかしてしまい、なんか全体的にぼややーんとした訳になってしまった。一文を理解しなかったために一段落総崩れ。あいまいな訳になってしまうということはわかっていない証拠。明確な訳が可能になるまで、きちんと理解すること。
・ひっくり返す技
違和感を感じつつも、どうしようもなく使ってしまった依頼人という言葉。そう、ここでは依頼されたわけじゃないのだ。ひっくりかえせば解決でした。ちらっとは浮かんだんだけどなー。ここはやっちゃって良いところ。
・語順
犯行の説明の部分。読みやすくするためと、殺害という言葉を繰り返さないため(うまくやらないと、妻が殺されたことを何度も書くことになりそうだった)に、時系列で、「保険金を掛け、ごろつきに殺しを依頼」というかんじで訳し、殺害についての描写はあとでくるようにした。先生訳は「容疑は妻殺し」というように最初にまとめ。後はその詳細説明という形にして、もう一度出てくる殺害という言葉は「犯行」という言葉で避けていらっしゃいました。うーん、こっちのほうがすっきり。なかなかこの「最初にまとめる」技ができないなー。(あらら、今気がついたけど、わたし方式でいくなら、後半は「殺した」を使ってよかったはずなのに、うっかりして後半まで「殺す」を避けてしまってる。おばかー)
・死んでいく音を聞く?
これは具体化(もしくはごまかす?)しないとだめだろう、ということで具体化してみましたが、案の定やりすぎ。この段落は、事件の悲惨さを書いているところだから、強調方向でやってみようと思ったのですが・・・。やっぱりだめかー。いや、だめだとは思ったんだけど。先生訳のような具体化なら違和感なし。
・法律用語はいい加減に使わないこと
とにかく、しっかり調べましょう!該当箇所多すぎ。きちんと気配りすること。
・またもや、違和感センサーが誤作動?
心変わりという言葉を聞くと、どうも色恋沙汰のイメージが浮かんでしまって。わたしのセンサーは変なときに働いちゃうので困ります。
・椅子がないとき
英語ではsit downと書いているのに、座るべき椅子がないことがたまにある。椅子をプラスするか、座るをマイナスするかだろうなと思い、座るのほうを消してみた。ここではOKだったみたい。
・逆方向の形容詞 矛盾解消
「折り目のついた、しわのない」という表現に違和感を感じた。皺がないというと、つるっと滑らかなイメージ。折り目という言葉とは矛盾しちゃうんじゃないかと「アイロンが効いた」という言葉を選択。センサーは正しく作用したらしいが、それでも囚人服の形容としてはちょっと不自然。先生訳なら自然。先生は、普段擬音語は避けられますが、ときどき、効果的に使われます。
・プラスすべきことはプラス
答弁すると原文になっていても、文脈でどちらの答弁か、明確にすべきところであれば明確にする。日本語同様、英語でも、自明のことは省略されるので注意。
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