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わたしを離さないで カズオ・イシグロ著

美しく哀しい、繊細な物語だった。こうしたテーマで小説を書けば、どうしたってどぎつい色が出てしまいそうなものなのに、水彩画のような静かな世界が淡々と広がっていく。ずっと雪景色だったような印象すらある。あらゆる音が吸い取られた、しんと静まり返った世界。保護官とは・・・介護人とは何なのか、次々と明らかにされる驚愕の真実も、その世界を崩すことはない。
主人公の心の機微が丁寧に描き出されている。一人の人間が想像のうえで創り出した人物だとはとても思えない、リアルな存在感。その繊細な描写は、繊細であればあるほど、主人公の生まれや、運命、存在そのものの哀しさをいっそう際だたせている。
読後感は哀しみが心の底の方を静かに流れているような感じ。胸を締め付けられるような哀しみではない。不快さもない。ただ静かにそこに存在する哀しみ。
とてもいい本を読んだ後は、しばらく何も入れたくなくなる。次に読む本の選択が難しい。

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