読んだ本をまとめて

ブログに感想をアップする時間がなかなかありませんでしたが、引き続き海外ミステリー読むぞー!!キャンペーンは続いておりました。

読了した本

「誇りと復讐」(上・下)…読者が面白いと思うことをすべて盛り込んだような、つぼを押さえた本。手に汗握る逆転劇がたまらない。

「さむけ」…いぶし銀ですな。

「死ぬほどいい女」…徹夜本。一気読みでした。もの凄くパワーのあるノワール。今まで読んだことのないタイプの本。

「風の影」(上)(下)…薫り高い作品でした。読まずに死んだらもったいない!と思うくらい良かった。こんな本を訳せたら生まれてきたかいがあるというもの。翻訳もとてもいい。文章が美しいです。スペイン語の翻訳家の方ですが、勉強になります。

『犬の力』(上)…言わずと知れた、昨年の「このミス一位」本。

「アメリカン・デストリップ」(上下)…キング牧師と、ジョン・F・ケネディの兄ボビーの暗殺を描いた、USAアンダーグラウンド三部作の第二作。ノワールの巨匠、ジェームス・エルロイの作品。教祖様のように慕う読者もいる作家さんです。独特のリズムが生み出すうねりに、いつの間にか呑み込まれてしまいます。ちょっとでも表現を外すとこうはいかないのよね。

「死の味」(上)…女流作家のきめ細やかさを感じる。情景描写が美しい。

今読んでいる本

「時の娘」「永遠の仔」「アメリカンタブロイド」

「世界ミステリ作家事典」なるものも、奮発して買い込んでしまいました(本格派篇、ハードボイルド篇両方)。これを参考に、面白そうな本があったら片端から読んでいこうっと。ちなみにこの事典、リーディングのあらすじ書きの勉強にもよさそうです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

歯と爪 B.S.バリンジャー著 読了

この間ちょっと触れた、古いのに訳がとても新しく感じたミステリーです。抑えめの訳がストーリーによくあっています。この本には返品保証がついています。本の残り4分の1くらいの所が袋とじになっており、袋を切らないで返品すればお金を返してもらえるそうです。つまり、「あんた、ここで、本がおけるのか、この結末を読まないでも平気なら返してみろ!」という、強気な本なんですね。昔はそういうの、よくあったのかな? わたしははじめて見ました。古本で買ったので、もう封は切られていましたが(この本を売った持ち主は誘惑(?)に耐えられなかったらしい)。

主人公は手品師のリュウ。ある日フィラデルフィアからほぼ身一つでニューヨークに逃げてきた、いわくありげな若い女を拾います。彼女が持っていた荷物は、帽子箱とひとつと小さいけれどやけに重い鞄がひとつ。リュウはタクシー代さえ払えずに困っていた彼女に、自分の泊まっていたホテルを提供し、それが縁でふたりは一緒になります。しかし、幸せなときは長くは続きませんでした。巡業でフィラデルフィアに行ったとき、妻は何者かに殺されてしまいます。妻のおじは、腕のいい銅版師で、ある悪党にだまされて偽札の銅版を彫ってしまい、妻はそれを始末するために、小さな鞄に隠してニューヨークに逃げてきたのでした。妻の小さな鞄からは銅版が消えていました。リュウは復讐の鬼となり、手品師のテクニックと知能を駆使して、妻の敵を殺すための緻密な計画をたて、冷徹にそれを実行していきます。

それと同時進行で、なぞめいた裁判のシーンが描かれていきます。死体もないのに、殺人があった痕跡ばかりが、山のように残されている、奇妙な事件の裁判です。

この二つの物語が、どのようにつながっていくのか?ふつうなら気になってしょうがないはず。わたしでもやっぱり袋とじは切ってしまうだろうなあ。主人公が手品師っていうのがまた、なんというか、古きよきミステリーらしい、いい味をだしてくれますよね。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

幻の女 ウィリアム・アイリッシュ著 読了

「夜は若く、彼も若かったが、夜の空気は甘いのに、彼の気分は苦かった」

冒頭の一文の美しさに惹かれて手に取りました。作者は1903年生まれ、一世紀以上前に生まれてるんですね。

この「彼」こと、ヘンダースンは、妻と喧嘩をして家を飛び出し、勢いで、奇妙な帽子をかぶった女を誘ってレストランで食事をし、妻と一緒に行く予定だったカジノ座につれて行く。その後、バーで軽く酒を飲んで別れたが、家に戻ってみると、妻は彼のネクタイで絞殺されていた。妻との仲が既に冷え切っていて愛人までいた彼は、警察からすれば、限りなく黒に近い。すぐに逮捕され、裁判で死刑が決まる。犯行時刻にそのいきずりの女と一緒に過ごしていたことさえ判明すれば、無実が証明されるはずなのだが、なぜか、レストランの店員も、バーテンダーも、彼には連れの女がいなかったと証言する。刻一刻と迫る死刑執行の日。彼を救うため奔走する、彼の愛人と親友。幻の女はみつかるのか。

とても雰囲気のあるミステリーで、書き出しの訳もとてもすてきでしたが、訳の古さは感じてしまった。生き生きとした魅力的な訳で、発行当時は時代にぴったりしていたのだろうなというのは伺えるのですが、ひょっとしてこういう個性が強いて魅力的な訳のほうが、もしかしたら色あせしてしまいやすいのかもしれないなーなんて思ってしまいました。とくにセリフに古さを感じました。先生が安易に流行の口語を使ったりしないのも、時代を反映しやすいセリフのほうが古びるのが早いからなのかも。

いま、この作品より30年以上は古いミステリを読んでいるのですが(訳者はなんと1901年生まれ)、どういうわけか、その作品のほうが新しく感じてしまいます。いまの若手の訳者さんと勘違いしそうなくらい古さをまったく感じさせません。なんでなんだろう?個性的ではないかもしれないけれど、きっちりした丁寧な訳、、だからなのかなあ。

訳のことばかり書いてしまいましたが、ストーリーは、サスペンス性も意外性も高く、(わたしの好きな大どんでん返しもあり)、楽しめました。意外な人物が犯人だったのですが、その犯人目線で描かれている箇所も多いので、伏線はしっかりつかまえなければいけないいし、訳し方がむずかしそう・・・(って、また訳のはなしに戻ってますが)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

コフィン・ダンサー:ジェフリー・ディーヴァー著 読了

感想書くのが遅くなりましたが、だいぶ前に読了してました。この本も上下組だけど、長さも感じさせず、読み始めたらあっというまでした。おとくいの大どんでん返しに、またあっさりだまされた。でも、こう鮮やかにだましてもらえると、腹が立つと言うより爽快!

小さな航空会社を経営する夫婦とその友人は、ある大物武器密売人が証拠隠滅する現場を目撃してしまう。密売人は、コフィンダンサーと呼ばれる、殺し屋に3人の殺害を依頼したらしく、目撃者のひとり(夫)が乗った飛行機が空中で大破。残された妻と友人は二日後に密売人の裁判で証言することになっている。コフィンダンサーは必ずそれまでに、ふたりを仕留めに来る。コフィンダンサーとリンカーン、悪と善を代表する切れ者同士の、息詰まるような頭脳戦が始まる。

「残り時間は45時間」、タイムリミットをつくることで、ハラハラ感を煽る手法は、伝統的ながらもやはり効果的。あっというまに、ストーリーに引きずり込まれてしまう。この作者の本は、本当にエンターテイメントのテクニック満載ですね。

キャラクターも相変わらず魅力的。アメリアとの恋も進展中。アメリアが、目撃者の女性を守ろうと必死になるリンカーンを見て、焼いちゃったりするのがかわいい。目撃者の女性(殺された経営者の妻でパイロット)がまた、いいキャラしてます。美人とは程遠く、若いころには容姿で散々からかわれたほどでありながら、なぜか、ひとをひきつける魅力的な女性。ある分野を極めた人間の強さと魅力が良く出ている。

前作からのおなじみの面々もそろって登場。介護士トムの肝っ玉母さんぶりも健在。前作では敵役だった、カメレオンこと、デルレイは、本作ではリンカーンを助けて大奮闘。カメレオンという異名の由来となった、外見から話し方にいたるまで自在に変貌できる能力を存分にいかし、潜入捜査でコフィンダンサーの裏をかきます。

つぎは、エンプティ・チェアね。まだまだ読んでない本がたくさん残ってるので楽しみ(≧∇≦)。ディーヴァーさん、これからもたくさん書いてくれー。

最後に備考として・・・飛行機関係の用語がたくさん出てくるので、その分野を訳すときには大いに参考になりそうです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

七人のおば:パット・マガー著 読了

本格ミステリーの傑作だとのことで、面白そうだったので読んでみました。いっき読み!前回の復習もしなくちゃなんないし、通信教育の締め切りも間近だというのに、読み始めたらとまらなくなってしまった。

新婚の妻サリーのもとに、おばが夫を毒殺して自殺したことを知らせる手紙が舞い込む。しかし、肝心な加害者と被害者の名前が書いていない。おばは7人いるのだが・・・。気になって眠れない妻のために、夫のピーターは、妻が語るおば達と暮らした日々の回想から、犯人と被害者を推理する。

早くに両親をなくしたマーティン家の娘達(おば達)の親代わりを務めていたのが、長女のクララとその夫フランク。クララは世間体を何よりも重んじる人物で、その価値観にもとづいて、妹たちに夫をあてがっていく。しかし、偏った価値観にゆがめられた結婚はどれもて綻びが出来ていて、世間体を恐れたクララがその綻びをつくろおうと試みるたびに、さらに事態は悪化していく。状況を聞く限り、どのおばがどの夫を殺してもおかしくはない。はたしてピーターが出した結論は?

すさまじい人間ドラマ。どろどろの家庭の中を、年若い姪のサリーが傍観者として見ているかんじは、ちょっと「家政婦は見た」っぽい!? かなり古い作品のはずだが、こういう人間同士のごたごたというテーマは古びることがないのか、作者の腕のせいなのか、まったく古さは感じない。話自体は、姉の夫を妹が奪ったり、専業主婦の妻がアル中になったり、と、昼メロにでも出てきそうなありがちな話だけれど、キャラのセリフや反応が、ステレオタイプに陥いっておらず、とてもリアルで、想像上の人物であることが信じられない。作者の人間観察の鋭さに脱帽。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

ボーンコレクター:ジェフリー・ディーヴァー著 読了

お、おもしろかったー。聞きしに勝るジェットコースターぶり。法務局の供託課でウン百万もったまま没頭してしまい、窓口の係員に何度も名前を呼ばれてしまった。危ない、危ない。しかし、このジェットコースターを止めない訳者もすごいわ。わたしだったら止めまくりそう。

いい作品というのは、やっぱり、キャラクターが魅力的ですね。主人公のリンカーン・ライムは鑑識中の事故で四肢麻痺患者となった科学捜査の専門家。自分では指一本動かすことさえ出来ない状態にもかかわらず、怖ろしいほど切れる頭で、ベットに横たわったまま犯人を追いつめていきます。現場に行くことが出来ないライムの手となり足となり、目となるのが、ヒロインのアメリア・サックス巡査。心に傷を抱えており、モデル並みの美貌に恵まれながら、自分の皮膚をかきむしる自傷癖を持っています。

脇役陣も魅力的。特に介護士のトムがいいですね。身体が思うようにならず、癇癪を起こすライムを、決して甘やかすことなく、母親のような厳しさと優しさで支えています。

犯人の動機も説得力があり、ひねりが利いていてよかったです。ミステリとして間違いなく超一級品の本作ですが、障害をもった方の心の機微がリアルに描かれていたりして、たんなるミステリにはとどまりません。ライムとサックスの恋も、純愛好きな中年女性にはたまらないですねーc(>ω<)ゞいろんな楽しみ方が出来そうです。

ミステリ翻訳の参考図書としてもよさそう。鑑識の専門用語や、警察組織のことなどバシバシ登場するので(巻末には鑑識用語集までついてるし)、原書と一緒に揃えてみてもいいかも。

最近買った、ミステリ作家読本によると、作者のジェフリー・ディーヴァーは、「化けた」作家だそうです。日本に紹介された当初は、評判もぱっとしなかったらしい。それが「静寂の叫び」をきっかけに、一気に才能が開花、現在に至るそうです。大化けだなー。

いいなー。わたしも化けたい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)